酒造会社様 全社研修(2026年8月21日|高知県)

2026年8月21日、高知県にて、酒造会社様の全従業員を対象とした全社研修の一部を担当させていただきました。

今回の研修では、会社の歴史や大切にしてきた考え、これから目指していく方向性などをまとめた社内冊子を土台にしながら、

【これまで大切にしてきたことを振り返る】

【3年後の会社やチームを考える】

【自分自身の良さや強みを受け取る】

【3年後の自分を描く】

という流れで、対話を中心に進めていきました。

約65名の皆さんが参加する全社研修です。

一方的に理念を説明する時間ではなく、一人ひとりが自分の経験や考えと結びつけながら、会社のこれからと自分自身のこれからについて考えていく。

そのために、研修内容だけではなく、投影資料、ワークシート、GOOD JOB CARD、そして当日の運営方法まで、担当の皆さんと相談しながら、一緒に細かく作っていきました。

今回は、その準備の過程も含めて振り返ってみたいと思います。

目次

1. 全社研修の概要と、事前準備で大切にしたこと

今回の研修では、会社の歴史やこれまで大切にしてきた考え、これから目指していく方向性などをまとめた社内冊子が、新たに作られていました。

ご相談をいただいた時に感じたのは、この冊子を単に「会社が作ったもの」として終わらせるのではなく、参加者の皆さん自身に消化してもらい、日々の仕事につながるものにすることが大切だということでした。

そこで、準備段階から一つ意識していたのが、

【冊子の内容を講師が説明する研修にはしない】

ということでした。

どれだけ良い言葉が書かれていたとしても、それを私が解説して終わってしまえば、参加者自身の言葉にはなりません。

そこで、

  • 自分はどの言葉が心に残ったのか
  • どこに共感したのか
  • 少し引っかかったところはあったか
  • 相手と話してみて何を感じたのか

といった問いを置きながら、できるだけ参加者の皆さん自身に話していただくことを考えました。

また、準備を進める中で担当の方から、

【3年後の自分を描く時間もつくりたい】

というご要望をいただきました。

最初に伺った時には、正直なところ少し難しいテーマだと感じました。

「3年後、どうなっていたいですか?」

と突然聞かれても、すぐに答えられる人ばかりではありません。

さらに、会社の理念を考えることと「3年後の自分」をどうつなげればいいのかという難しさもありました。

そこで、いきなり未来を考えるのではなく、過去を振り返り、自分が大切にしているものを見つけ、さらに自分自身の強みを受け取った上で未来を描く。

そんな流れをつくることにしました。

2. 理念を「説明する」のではなく「対話する」

研修では、まず社内冊子を読んで印象に残ったことを、参加者同士で話していただきました。

ここで大切にしたのは、

【正しい感想を言ってもらうことではない】

ということです。

印象に残った言葉があってもいい。

共感した部分があってもいい。

少し引っかかったところがあっても構いません。

同じものを読んでいても、置かれている立場やこれまでの経験によって、心に残る部分は違います。

その違いを話し、他の人の感じ方にも触れていただくこと自体が、今回の研修では大切な時間になると考えました。

また、会社として大きな変化を迎えようとしているタイミングでもあったため、その変化が自分たちにとってどんな意味を持つのかについても、改めて話していただきました。

ここでも求めたのは、会社としての「正解」ではありません。

「私はこう感じている」

「自分にとっては、こういう意味がある」

と、それぞれの立場から言葉にしていただきました。

当たり前になっていることだからこそ、改めて自分の言葉で意味を考えてみる。

実際に皆さんからさまざまな思いを聞くことができ、私自身も嬉しく感じた時間でした。

3. 自分の経験から、大切にしていることを見つける

続いて、

【この会社で働いていて、印象に残っている出来事は何ですか?】

という問いを置きました。

嬉しかったこと。

悔しかったこと。

少しイラッとしたこと。

最近、なぜか心に残っていること。

まずは、過去3年間ほどを振り返りながら、具体的な出来事を思い出していただきました。

ここでも、最初から、

「あなたが仕事で大切にしている価値観は何ですか?」

とは聞きませんでした。

いきなり抽象的な問いを出すと、どうしても言葉が出にくくなります。

そこで最初に少しメモをする時間を取り、その後、具体的な出来事について相手に話していただきました。

そして聞く側には、一つ役割をお願いしました。

相手の話を聞きながら、最後に、

「あなたは仕事の中で、○○を大切にしているように感じました」

と伝えてもらいます。

自分では当たり前になっていて気づいていないものも、人に話し、人から返してもらうことで見えてくることがあります。

【自分のことを、自分だけで考えない】

ということも、今回大切にしたことの一つでした。

4. 3年後の会社・チームを描く

過去の経験を振り返った後は、少しずつ未来へ視点を移していきました。

問いは、

【3年後、どんな会社やチームで働いていたいですか?】

です。

どんな状態なら誇りを持てるのか。

どんな会話や行動が増えていたら嬉しいのか。

どんな人たちと、どんなチームで働いていたいのか。

まず自分自身で考え、その後はグループでも話していただきました。

一方で、理想の未来を描くことが得意な人ばかりではありません。

そこで、

「どんな会社がいいか思いつかなければ、こんな会社にはなってほしくない、というところから考えても構いません」

ともお伝えしました。

「こうなりたい」が難しければ、「こうはなりたくない」から考えてみる。

それを裏返していくことで、自分たちが大切にしたい組織の姿が見えてくることがあります。

誰かから示された未来を聞くのではなく、

【自分たちは、どんな会社で働いていたいのか】

を話し合う時間にしたいと思いました。

5. GOOD JOB CARDで、互いの良さを言葉にする

今回、特に時間をかけて準備したものの一つが、

【GOOD JOB CARD】

でした。

身近な仲間の良かったところや頑張っているところ、感謝していることなどを、具体的な言葉にしてカードで届けます。

例えば、

  • 困っていた時に声をかけてくれて助かった
  • 丁寧に確認してくれるので安心できる
  • 最後までやり切る姿勢を尊敬している

といったことです。

身近な人ほど、その良さやありがたさは「当たり前」になってしまうことがあります。

そこで、改めて言葉にして本人へ届けていただきました。

カード自体も今回のために一から考え、デザインを作り、実際に印刷して当日持参しました。

ただ、約65名がそれぞれ複数枚を書くとなると、200枚近いカードになります。

どうすれば研修の流れを止めずに本人へ届けられるのか。

また、受け取る枚数の違いが必要以上に目につくような場にもしたくありませんでした。

そこで、カードは部署ごとに仕分けし、運営を担当してくださった皆さんに協力していただきながら、その後のペアワークの最中に配布する形にしました。

参加者の皆さんが目の前の対話に集中している間にカードを届ける。

この方法で、とてもスムーズに進めることができました。

研修の内容だけではなく、

【参加者がどんな気持ちでその時間を過ごすのか】

まで想像しながら運営を考えることの大切さを、今回改めて感じました。

6. 強みを受け取った上で、3年後の自分を考える

GOOD JOB CARDを書いた後は、さらにペアになって、お互いの強みを見つけて伝え合っていただきました。

まず、自分が少しうまくできたこと、自分なりによくやったと思うこと、誰かから感謝されたこと、よく頼まれることなどを話します。

聞く側は、その話の中から、

「あなたには、○○という強みがあるように感じました」

と伝えます。

ここでお伝えしたかったのは、強みというのは、単に良いところを言ってもらって気分が良くなるためのものではないということでした。

私の中では、強みとは、困難な時に自分がつかむことのできる【一本のロープ】のようなイメージがあります。

これから会社が変化していく中では、思うようにいかないことや、コミュニケーションの行き違い、価値観の違いが出てくることもあると思います。

そんな時に、

「自分には、こんな強みがある」

「この強みを、今の状況でどう使えるだろう」

と考えることができる。

そのためのリソースとして、自分自身の良さを受け取っておいてほしいと思いました。

そして、GOOD JOB CARDに書かれた言葉や、目の前の相手から伝えてもらった強みを持った状態で、いよいよ、

【3年後、あなたはどんな自分になっていたいですか?】

という問いに向き合っていただきました。

今回は未来を描くための問いもいくつか用意しました。

  • すべてがうまくいくとしたら、3年後はどんな自分になっているか
  • 周囲の人たちには、どのような変化に驚いていてほしいか
  • 今の延長線上にはない未来を選ぶなら、どんな未来を実現したいか
  • その未来が実現している時、自分は何をしているか
  • 失敗しないことが保証されているなら、何に挑戦したいか

すぐに一つの答えを決めるのではなく、思いついた言葉やイメージをまず書き出す。

その後、人に話すことで少しずつ形にしていき、最後には、

【3年後、私は……】

という形で、仮説でもいいので文章にしていただきました。

未来を考える前に、過去を振り返り、自分が大切にしているものを知り、周囲から自分の強みを受け取る。

今回、この順番をつくったことはとても大切だったように思います。

7. その場を見ながら研修をつくっていく

今回改めて感じたのは、事前に研修をしっかり設計することと同じくらい、当日の場を見ながら進めることの大切さでした。

当日は、私の担当時間より前のプログラムが予定よりかなり早く進みました。

そこで担当の方と相談し、当初より長い時間をいただいて研修を進めることになりました。

結果的には、一つひとつの対話や共有を急ぐことなく、必要だと感じたところに時間を使うことができました。

また、全体共有についても、当初は一部の方を中心にお話しいただくことを想定していました。

しかし、実際に始めてみると、もっといろいろな方から話を聞けそうな空気を感じました。

そこで途中から、

【せっかくの全社研修なのだから、話せそうな方には積極的に話していただこう】

と考え、さまざまな方に問いかけました。

発言していただいた時には、その意見の良いところを拾いながら、「話してよかった」と感じてもらえるような関わりも意識しました。

研修の最後には、それまで考えてきたことを普段一緒に働いている人たちとも共有してもらい、

【明日から、どんな行動を増やしていくのか】

まで考えていただきました。

社内冊子について対話するところから始まり、過去の経験、自分が大切にしていること、会社やチームの未来、自分の強み、3年後の自分、そして明日からの行動へ。

一つひとつを対話でつなぎながら、最後まで進めることができたように思います。

8. 参加者の反応と、講師としての振り返り

研修後、全従業員を対象にしたアンケートでは、ワークショップの満足度が現時点で3.9/5点だったと伺いました。

また、担当の方からは、GOOD JOB CARDが参加者の皆さんにとって多くの気づきにつながったことに加え、ご自身にとっても、時折見返すことで自分の軸を確認するための指針になると感じているという言葉をいただきました。

かなり時間をかけて準備したものでもあったので、こうした言葉をいただけたことはとても嬉しく感じました。

今回の研修を振り返って改めて感じるのは、

【研修は、講師一人ではつくれない】

ということです。

GOOD JOB CARDも、最初から私の中に完成形があったわけではありません。

「3年後の自分を考えてほしい」というご要望があり、

どうすれば参加者の皆さんが未来を描きやすくなるのかを考え、

担当の皆さんと話を重ねる中で、

「まず、自分自身の良さを受け取ってもらう時間をつくってはどうだろう」

という流れが生まれていきました。

そこから、

  • カードをどんなものにするのか
  • どのタイミングで書いてもらうのか
  • どうやって回収し、本人へ届けるのか
  • その後の強みのワークとどうつなげるのか
  • 最後の「3年後の自分」へどうつなげるのか

と、一つずつ考えていきました。

投影資料、ワークシート、カード、当日の進行は、それぞれ別々のものではありません。

【参加者の皆さんに、どんな体験をして帰っていただきたいのか】

そこから逆算して、一つの流れとしてつくっていく。

今回の研修では、そのことを改めて大切にしました。

そして、事前に考えた通りに進めるだけではなく、当日の参加者の様子や時間の流れを見ながら、必要に応じて変えていく。

準備と当日の柔軟さ、その両方の大切さを改めて感じた研修となりました。

9. 主催者・参加者への感謝

今回、全社研修をご一緒させていただいた主催者の皆様、本当にありがとうございました。

企画段階から何度もお話をしながら一緒に研修を考え、直前まで社内冊子や投影資料、ワークシート、GOOD JOB CARD、会場での運営方法まで細やかに確認してくださった担当の皆様には、大変助けていただきました。

また、約200枚にもなるGOOD JOB CARDを仕分けし、研修を止めることなく参加者の皆さんへ届けてくださった運営・サポートの皆様にも、本当に感謝しています。

そして何より、こちらからの問いかけに向き合い、自分自身の経験や未来について考え、たくさん話し、周囲の方の話に耳を傾けてくださった参加者の皆様、ありがとうございました。

長くお付き合いをさせていただく中で、今回こうして全社の皆さんと一緒に、会社の未来と一人ひとりの未来について考える機会をいただけたことを、本当にありがたく感じています。

今回の時間が、会社のこれからを考えるきっかけになるとともに、一人ひとりが自分自身の良さや、身近な仲間の存在を改めて感じる時間になっていたら嬉しく思います。

貴重な機会をご一緒させていただき、本当にありがとうございました。

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この記事を書いた人

株式会社タニタの創業ファミリー。
同社の営業・新規事業・新会社立ち上げ、海外における役員経験を経て独立。株式会社タニタ前代表取締役社長の最も近くで、その経営学を学び、赤字企業だったタニタを成長させた「タニタの成功法則」を受け継いできた。

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