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事業承継と親子関係

昨日あるセミナーに参加。こんなお話だった。

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創業100年を超えた企業。父親の代で、時代に乗って出店・拡大。自分は4代目。とにかく「4代目だから」と地元で剣道やったり地元のボーイスカウトに入ったり・・・「(父の)言いなりでした」。

父はロータリークラブ、青年会議所、商工会議所など、「長」が付くものが好きで「会長」職をよくやっていた。父が行けない時に代理で行くと「お父さんにはお世話になっている」「お父さんによろしく言って」「(お父さんと)眉毛似てるな!」と言われて、「私ではなく父を見ている。」「(私は)透明人間」

会社を引き継いだ後、バブルが崩壊。父は「出店・採用」。私は「閉鎖・リストラ・解雇」。「親父の尻拭いか!」
事情によって本社移転する事になり、銀行へ資金を借りに行く。「お父様の個人保証は?」「(私は透明人間だから・・・)」
倒産の危機に面した時に、毎日安い酒を飲んでは、フラフラしながら会社へ。そんな最悪の時期に、ある方から「お父さんに謝りましょうね」と既に亡くなっていた父親に謝る事をアドバイスされる。

仏壇の前で「親父のことが嫌いでした。すいませんでした。」と土下座した時に、涙が止まらなくなった。何故か遊んでもらったたくさんの記憶が出てきた。「神様は私と父にかけがえのない時間を与えてくれていたんだ」「父を憎んでいたから不都合な記憶だった」
そこから何かが変わって、銀行からも私に融資を頂き、「透明人間じゃなくなった」。
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後継者は、親の会社に入社する前から、そして入社してからも、「親」という大きな存在に悩まされる。社内外で当然ながら中心となっている親は、既に役職も経験も実績もはるかに上回っているし、そうでなければ引き継ぐ会社とはならない。その親とキャリアをスタートしたばかりの自分を比べる事が多い。彼が語った「透明人間」という言葉は非常に象徴的な言葉と思う。後継者は、人間としてのアイデンティティを揺るがされる非常に厳しい環境を生き抜き、実績を出すことが求められる。だから、多くの人は、親を否定し、そこから自分を見出そうとする。「親を超える=親に勝つ」に近い図式がそこで生まれてくる。すごく優れた経営者の方とお話していた際にも、「父の代から(比べると)全て変えた」とおっしゃる方もいる。自分の存在価値を懸命に取り戻そうとする訳だ。これがモチベーションになる事もあるし、だから悪い訳ではない。ただ、親の成功を全て否定する時に、それが自分への否定になり、またそこに価値を感じていた従業員や関係者やお客様の期待を裏切ることにもつながる可能性があることを知っておくべきと思う。

彼の場合には、「お父さんに謝る」ということで、感謝の気持ちが芽生え、大きな親の愛にも触れ、自分自身が「透明人間」ではない事を意識的にも無意識的にも体感したことが非常に大きな違いにつながっていると思う。彼が「父を憎んでいたから不都合な記憶だった」と語ったが、人間は都合のいい記憶を拾ってくる生き物である。否定する対象の父親が良いことをやってくれるはずがない。そう自分で決めて、それ以外の記憶を消し去ってしまったように思い出さない。同じように「透明人間」と自分で自分を決めれば、そのような記憶が作られ、そしてそのように行動をするようになる。だから、社内でも、社外でも彼は「透明人間」だったんだろう。自分への認識が変わったことで、たくさんの物事が動き出したのが今回のお話だったと思う。

僕の学んできた心理学では、「ポジションチェンジ」というワークがある。苦手な人や、まだ何かひっかかる人とか、伝えたいことがある人をイメージして、対話をするというワークだ。多くの人が涙したりする。経営者の方、特に事業承継の継ぐ人や継がせる人達は一度体験されるといい。

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