医療機関新人向けレジリエンス研修(2025年5月26日東京)

1. 研修の振り返り
2025年5月26日、東京にて医療機関の新入職員を対象に「レジリエンス実践トレーニング 〜ストレスに強くなる 自分でできるメンタルケア〜」を実施しました。
参加者は医療現場で働き始めたばかりの看護師・スタッフの皆さん。社会人としての新たな環境に慣れる一方で、心身の疲れや組織との関係性に揺れを感じる時期でもあります。
事前に私自身が感じていたのは、「組織へのちょっとした不信感」や「期待と現実のギャップ」に悩む可能性があるのではないかという仮説でした。
そのため今回は、内容を“詰め込む”よりも、彼女たちの今の状態に寄り添い、エネルギーを回復させる時間として設計しました。
スタートでは、「プライドを持って頑張っている方々に、どう受け取ってもらうか」を特に意識。
疲れを抱えながらも前に進もうとする参加者に対し、まずは「より活躍するためのヒント」を届けたいというメッセージから始めました。
冒頭で自身の経歴(上場企業や大学講義での取り組み)を簡単に紹介し、安心感と信頼感を持って聞いていただける雰囲気を意識しました。
2. 研修内容と参加者の様子
レジリエンスの基礎と「自分を知る」
講義ではまず、「レジリエンスとは何か」を“風にしなる竹”の比喩で紹介。
困難から立ち直る力は、生まれつきではなくトレーニングで高められることを強調しました。
VUCA時代におけるストレスの背景や、厚生労働省のデータをもとに、現代の働き手が抱える不安の構造を共有しました:contentReference[oaicite:1]{index=1}。
そのうえで、ネガティブ感情を否定するのではなく、「感情を認知する力」=感情リテラシーを鍛える実習を実施。
「自分の象を大切にする」というメタファーを用いながら、
自分の中にある“感情”を見つめ、反芻を断ち切る方法を学びました。
ABC理論と「思考のクセ」
続いて、アルバート・エリスのABC理論をもとに、
「同じ出来事でも、捉え方が違えば感情も変わる」という体験ワークを実施。
「思い込み犬(正義犬・批判犬・謝り犬など)」というユーモラスな比喩を使いながら、
自分の中に潜む“思考パターン”を振り返り、ネガティブ感情への対応方法を学びました。
講義の途中から、静かにうなずきながら聞く方や、
「自分にも心当たりがある」と笑みを浮かべる方も見られ、
少しずつ場に柔らかさが生まれていきました。
自己効力感と「できる自分」への信頼
後半では、「自己効力感(Self-Efficacy)」をテーマに、
自分を信じて行動する力をどう高めるかを紹介しました。
特に印象的だったのは、「自分ならできる」と思える体験の積み重ねこそがレジリエンスの基盤になるという点。
実体験・お手本・励まし・高揚感の4要素を、日常の仕事にどう落とし込むかを考えてもらいました。
感情を超えて「感謝と意味づけ」へ
最後は、「少し大変だった出来事を物語にする」「感謝の手紙を書く」というワークで締めくくりました。
辛い出来事の中にも学びや意味を見出し、支えてくれた人への感謝を思い出すことで、
表情がやわらぎ、笑顔が戻る方も多く見られました。
全体を通して、強い発言やアクティブな盛り上がりというよりも、
「静かに自分を取り戻す」ような温かな時間だったと感じます。
3. 講師としての振り返り・今後の工夫
今回改めて感じたのは、
「元気を出すこと」ではなく、「今の自分をそのまま受け止めること」が、レジリエンスの第一歩であるということ。
組織との関係性に迷いがある中で、
外から「頑張れ」と言われるよりも、
「頑張ってきたね」「それでも前を向けるね」と受け取れる言葉のほうが、心に届くのだと思います。
今後は、以下のような工夫を加えていきたいと考えています。
- 研修冒頭で「今日の気持ち」を書き出してもらい、空気を共有する導入
- 「組織と自分」ではなく「自分と大切な人」という文脈からレジリエンスを語る
- 照明・座席配置など、心理的安全性を高める環境デザインの工夫
4. 参加者・主催者への感謝
お忙しい中、日々の現場業務と両立しながらご参加くださった皆さま、
そして本研修の企画・運営にご尽力くださった関係者の皆さまに、心より感謝申し上げます。
静かで温かい空気の中で、
一人ひとりが「自分の心を大切にする」時間を過ごせたこと。
それがこの研修の一番の成果だったと感じています。
またお会いできる日を楽しみにしています。