業界団体様講演会(2025年5月27日東京)

1. 講演の概要
2025年5月27日、第一ホテル東京(新橋)にて、
某業界団体様の総会記念講演として、
「タニタ創業家が語る事業承継 〜何を守り、何を変革するのか?〜」をテーマにお話ししました。
当日は全国から約250名の組合員・来賓の皆さまにご参加いただき、
創業家の視点から見た事業承継のリアルなプロセスと、
そこに息づく「強み」「価値観」「変革」の物語を共有しました。
2. 講演のねらいと構成
講演の冒頭では、「事業承継とは、単なる世代交代ではなく“経営の再定義”である」というメッセージをお伝えしました。
経営・資産・株式といった“モノの承継”だけでなく、
創業者の想い・価値観・強みの承継こそが本質であることを軸に据えました。
講演は3部構成で進行しました:
- タニタ創業者から2代目へ:受け継いだもの、変えたもの
- 強みの発見:赤字企業を世界一に導いた力とは
- 価値観の承継:何を守り、どう未来へつなげるか
3. 第一部:タニタ創業者から2代目へ
創業は1944年。戦後間もない時期に谷田五八士(いわじ)氏が立ち上げた谷田無線電気製作所が原点です。
当初はシガレットケースやトースター製造などを手がけながら、
「三つの柱で経営する」という創業哲学を掲げ、挑戦を続けてきました。
やがて体重計事業に舵を切り、1959年にヘルスメーターを発売。
しかし、事業は常に順風満帆ではなく、1983年には赤字転落の危機も。
その転機となったのが、営業一筋だった私の父(四男)が後継者に選ばれた瞬間でした。
「長男がやると思っていた」という社内外の驚きの中、
父は体重計のシェアを1%から25%に引き上げ、
健康関連商品の開発を進め、タニタを再び成長軌道に乗せました。
1997年には世界No.1の体重計メーカーとなり、
“社員食堂”などを通じた新しい健康経営文化も芽生えました。
4. 第二部:強みの発見 〜赤字企業を世界一に導いた力〜
「強みの上に築け」というピーター・ドラッカーの言葉を引用しながら、
企業も人も“弱点克服ではなく、強みの発見と活用”によって成長することを強調しました。
体脂肪計の開発もまさにこの発想から生まれました。
「体重計に脂肪計をつけてみよう」という単純な発想が、
“世界初の家庭用体脂肪計”を生み出し、タニタの名を世界に広げたのです。
一方で、過去の新規事業の失敗事例も紹介。
プロジェクト中止の背景には、「人の強みを十分に活かせなかった」という反省がありました。
その経験が、後のポジティブ心理学との出会いにつながり、
「強みを活かす経営」「強みに基づくチームづくり」への転換を促しました。
セリグマン博士が提唱するポジティブ心理学をベースに、
強みを使うほど幸福度・生産性が上がるという研究データを紹介しながら、
「人を活かす経営」の重要性をお伝えしました。
5. 第三部:価値観の承継 〜何を守り、どう変えるのか〜
価値観とは、善悪や優先順位を判断する“根幹のものの見方”です。
ドラッカーの言葉を引用しながら、
「トップマネジメントの役割はビジョンと価値基準を設定すること」という観点を共有しました。
父の時代、タニタは赤字脱却のために大規模なリストラを経験しました。
「リストラしたくない」という強い想いと、
「社員が健康であってこそ会社が続く」という信念から、
誕生したのが“タニタの社員食堂”です。
この取り組みは単なる福利厚生ではなく、
経営者の価値観が形になった文化の象徴でした。
参加者の皆さんには、
「経営とはすなわち何か?」「何を守り、何を変えたいのか?」という問いを通じて、
それぞれの“経営観・人生観”を振り返っていただきました。
6. 講師としての振り返り・印象
会場では、業界を牽引される皆さまが真剣にメモを取り、
うなずきながら聞いてくださる姿が印象的でした。
創業家や後継者としての悩みは違っても、
「守るもの」と「変えるもの」のバランスを模索する姿勢は、どの業界にも共通しています。
講演後の懇親会でも、「社員の強みをどう活かすか」「次世代に何を残すか」といったテーマで
多くの方と深い対話が生まれ、短時間ながらも温かい交流の場となりました。
7. 主催者・参加者への感謝
このたびお招きいただいた某業界団体の皆さま、
そしてご準備・運営にご尽力くださった関係者の皆さまに、心より感謝申し上げます。
事業承継とは「人を継ぎ、想いをつなぐこと」。
今回の講演が、皆さまの組織や後継に関する取り組みを見直すきっかけになれば幸いです。
改めて、貴重な機会をありがとうございました。