ベテラン管理栄養士さんのメール
指導歴何十年というベテラン管理栄養士さんのメール文章を分析してみました。クライアントとのやり取りの中で何が効果を生んでいたのか。特に指導スタート時にどのようなメールを送っているのか興味がありましたので。個人的なメモになりますが、以下の通りです。
◎初回メールの構成
・感謝の気持ちを伝える「今回の機会を頂いて、ありがとうございます。」
・私(管理栄養士)がしたい事として、クライアントの大きいアウトカムを提示
「今回の趣旨としましては、健康について関心を持ってくださり、いつまでも健康で楽しい人生をおくることができますようお手伝いをさせていただければと思っています。」
・「メールのキャッチボール」という比喩表現で、楽しさなどのニュアンスと共に、「メールのやり取り」という今後やっていくことを大枠で行動レベルのイメージとして伝えている。
・「記入されましたら、1週間以内に返信くださいますようお願いいたします。」ということで、具体的にとって欲しいアクションを明確にする。
・「これから3か月間よろしくお願いいたします。」にて、期間を設定。回避的に分析すれば、ずっと続くと思うとちょっとつらいという人が出ることを防ぎ、ゴール思考で分析すれば、3ヶ月後の自分をイメージをリードしている。
◎指導開始のメールの構成
・感謝
・承認⇒「とても感心しましたことは、検査値に殆ど異常がないこと。そして常に献血をされて自己管理をしているとのこと、素晴らしいです!」
ちなみに、現状出来ている事のフィードバックが全体の1/3以上を占める
「食習慣に関しまして、「食事をきちんと摂ること」を心がけているということで改善項目もありません、現在の食習慣を継続されますように。生活習慣に関しまして、1日7000歩以上歩いている。駅では常に階段を使用、運動としてヨガやラジオ体操をしている。就寝時間・起床時間もほぼ決まっている等、全て当たり前の習慣となっているのでしょうね。XXさんのお人柄がうかがえます。体重は殆んど変化なく一定しているようで今後も維持してくださいね。 」
・クライアントが語る課題に意識を向けていく
「今回のお話しの中で、対人関係で疲労やストレスが多少ある事、総コレステロールがやや高めな事、動物性蛋白質の摂り方、食事・健康の情報が欲しい等のご希望がありましたので、順次お話を伺ったり、資料を添付しますのでよろしくお願いします。」
・具体的な行動の提示
「2週間後に計算した「算出方法」の資料を返信してください。これから2週間事にメールでお話しをしたいと思います。近況報告や疑問・質問などお聞かせくださいね。」
・相手のこれからの状況を想像し、ケアするメッセージ
「そろそろ梅雨も明け夏本番になりますので、体調にはくれぐれもお気を付けください。」
このメールの結果、「一日のカロリー摂取量が思ったより多いです。1,600くらいかなと思ってたのです。」と、指導されたのではなく、ご自身の気付きとしてカロリー摂取量に意識が向く形になっている。
◎クライアントに返信する際の構成
・相手の名前を冒頭に必ず入れる 「XXさん、」
・前回ケアした言葉を引き継いで、相手をケア
「梅雨は明けましたものの気候が不順ですが、体調はよろしいですか?」
・資料を受け取り、その結果からのプロとしての考察を入れる。プロとしての考察はこの後のクライアントをリードする場面に効果的。
「添付資料拝見しました。XXさんの摂取エネルギー量は1811kcalですね。標準体重の数値では55.6kgですが現在の50kgがベスト体重なのでしょう。 」
・大きなやりとりでの方向性を明示
「資料2部添付しましたので、参考にバランスの摂れた食事を心がけてくださいね。」
・相手ができたことを箇条書きでまとめて返す
「・食品表示を確認していること・食品を測ること・動物性食品を心がけて摂取していること とてもよいことです。 」
・今後の目標行動の提示
「今後は今までの食事と、必要エネルギー量・栄養バランスを比較してみてください。」
・クライアントが今回書いて来なかったが管理栄養士が把握しているアウトカムへのサポート ←ここは超ポイントで、最初に「疲れやすい」とか疲労について語っていたクライアントの課題を管理栄養士側から提案している。
「前回の資料は参考になりましたでしょうか?「疲労」について解消法・食事の摂り方を理解していただければと思います。」
・相手のこれからの状況を想像し、ケアするメッセージ
「これからますます暑さが厳しくなりますので、くれぐれも体調には気をつけてください。」
・具体的に求める行動の提示
「次回8月6日前後にメールをお待ちしています。」
返信①を受けてクライアントは、「疲労解消のために体を動かすこと」、そして
「甘いモノを食べるよりナッツ類を選択する」という具体的な行動変容につながっている。
この管理栄養士さんは、「正しい知識を伝えること」を大切な価値として置いているため的確な情報提供が出来ているとも言える。特に成功した指導について、今後も分析を行いながら、更に効果的な指導方法を確立して行きたい。
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